LGBT総合研究所が約34万8000人に対して、自分自身がLGBTか否かをアンケートするという大々的な調査を行いました。
そこから、LGBTの全容も見えつつあるように思います。
【1】少なくなかった! LGBTの割合
LGBT総合研究所は、性的指向や性自認に関するアンケートを2019年4月〜5月に実施。11月26日に結果を報告しました。
そこで、LGBTの認知度は91%であり、約10%はLGBT当事者であることが明らかとなりました。具体的には、性的指向が異性愛に該当しない人が7%、性自認が一致していない人が7.1%です。
誰にもカミングアウトしていない人は78.8%にも及んでいます。
なお、ここではLGBTの定義として、「体の性別と性自認が一致するシスジェンダーと異性愛者以外」と定めています。
【2】この調査の課題・問題点の指摘
この調査では、「LGBT・性的少数者に該当する人は約10.0%と判明しました」と報告されていますが、「体の性別と性自認が一致するシスジェンダー」と「異性愛者以外」と設定すると、該当しなくなってしまうLGBT・性的少数者がいます。
具体的には、恋愛感情はあるものの他者に性的欲求を抱かないノンセクシャル、恋愛感情がないものの異性に対して性愛を持つアロマンティック、好意を抱いた対象から行為を返されることを望まないリスロマンティックなどです。
つまり、この調査で指摘された10%以上に、LGBTQIA+を自認している人は多くいると考えられます。
LGBT総合研究所が“シスジェンダー”と“異性愛者”を非LGBTと定めた理由については疑問ですが、このデータではセクシャルマイノリティ全体の割合がつかめていないということです。
【3】潜在的LGBTが含まれていない数値
また、ノンセクシャルは夫婦仲でレスに至って気づくなど、当事者でも性衝動がないことに気づいていない人は多くいます。
その上、Xジェンダー(ノンバイナリー)なども「みんなそこまで女性・男性という意識があったの?」というように、普段性への意識をあまり持たない人が多いからこそ、気づきにくいマイノリティであると考えられます。
さらに、恋愛感情のないアセクシャルの多くは“マジョリティが抱く異性への好き”と“自分自身が異性に持っている好き”の形が違うことに気づいていません。恋愛感情がない、(さらに性的欲求がない)となると、恋愛に興味がないように思われるかもしれませんが……。
世間で異性と恋愛をすることが当たり前だと思われているからこそ、同性の友達に対して抱く好きな気持ちや尊敬の念、憧れの念が“異性への好き”だと誤解したまま交際している人は少なくないようです。
デミセクシャルも、絆など特別な関係性によって性的欲求や恋愛感情が伴うと言われていますが、アセクシャル以上に周知されていないため、ごく普通に親しい異性と交際を重ねている人は多いと思われます。
こういった潜在的なセクシャルマイノリティまで含めれば、LGBTQIA+の数というのは、決して少なくないでしょう。
【4】潜在的マイノリティの“見える化”がセクマイの生きやすさの鍵
ともすれば、潜在的マイノリティが、例えば性欲とはどういうことか、異性に対して抱く恋愛とはどういうことかということを知り、自分自身が潜在的に有していたマイノリティに気づけば、自認する、データで数的に現れるLGBTQIA+の数というのは爆発的に増えるはずです。
また、リスロマンティックなどの異性愛者に向きつつも(もちろん同性に惹かれる人もいるでしょう)、恋愛指向がマイノリティであるものを周知させることで、「これってマジョリティ(ノンケ)じゃなかったんだ!」と知るきっかけになり、これもまたLGBTQIA+の全容が見えてくる一助となります。
彼らが自己のマイノリティに自認しだしたとき、それは本当にマイノリティ(少数派)なのでしょうか。我々が想像する以上に、少数派と呼ばれている人は決して少なくないだろうと推察されます。
となると、今まで少数派だと思われていた人たちが、世間から見て当たり前で個性程度の差異でしかないという認識に変わるかもしれませんね。
【5】まとめ
LGBTの関心が高まってきたのは最近のことです。ようやく、その全容の一端が見えてきつつあるように感じます。
Shano編集部で、セクシャルマイノリティ当事者として声を上げていくことで、その全容を掴む一助となればと願っています。
(Amy/ライター)
参考文献
LGBT総合研究所.“LGBT・性的少数者に該当する人は10%と判明”株式会社 LGBT総合研究所.更新日2019-11-26.閲覧日2019-12-10.
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