手術で性自認の性に「成る」のか「戻る」のか……トランスジェンダーの心と体の感覚

手術で性自認の性に「成る」のか「戻る」のか……トランスジェンダーの心と体の感覚

以前、NHKの番組で様々なセクシャルマイノリティの方々が出演された番組において、「心と体の性別が一致しないトランスジェンダーの方々は、性別適合手術などを行った時にどう思うのか」という話題が出ました。

番組内には男性女性どちらも性別適合手術済みのトランスジェンダーの方が出ており、バーを経営しているゲイの方(色々な方と出会うからこその疑問だったようですね)からの問いです。

元々の身体に「成る」のか「戻る」のか……番組に出演されていた方の発言も加えて、少し考えてみましょう。

【1】そもそも、トランスジェンダーとは?

恐らく、この記事を読んでいる方の中にはトランスジェンダーに詳しい方もいらっしゃるでしょうし、当事者という方もいらっしゃるでしょう。なので説明や解説というのは今更であり、必要はないかもしれないですね。

ですがセクシャルマイノリティ当事者とはいえトランスジェンダーではない身としては、出来るだけ深く思考する為に。そして、トランスジェンダーという人々のことについて知ろうと思ってくださる方に何かしらの情報を得て貰うために、改めて整理しようと思います。

トランスジェンダーとは、心と身体の性別が一致しない人でありますが、その中でも心の性別がはっきりとしている人と考えた方が分かりやすいのかもしれないですね。心の性別が男性でも女性でもない人、また心に性別そのものがないという人も存在していますから。そういう意味では、「分かりやすい」部類に入るのかもしれません。

【2】とはいえ全員が性別適合手術をしたいわけではない

さて、「分かりやすい」と言ってもそれは大きな枠での話になりますから、「トランスジェンダーという人は全員性別適合手術をしたいのか!」と早合点してはならない所です。

そもそも、性別適合手術というのは大がかりな手術です。手術というのはどんな場所のものであれ、精神的な不安や肉体的なしんどさと付き合っていかねばならないものですし、それが生物として重要な部位である生殖器をどうにかするというのは「その後に望むものがある」としても術前術後の精神的・肉体的負担は想像を絶するものでしょう。

そうしたものの影響か、望んで性別適合手術をした当事者が自殺をしてしまうというケースもあります。実際、トランスジェンダーの人たちの中には、手術をしない明確な理由があったり、精神的にできないと感じる理由があったり、手術をしないことを前提に結婚生活のあり方を考えていたり、仕事を休めない…など物理的な理由があったり、様々な問題があります。

また、トランスジェンダーには「心と体の性別の不一致」を感じていても個人個人に差があるものなので、「今すぐにでも手術をしてどうにかしたい!」という人もいれば「違和感はあるけど、手術まではいいや」という人もいるんですよね。

【3】では、手術して戸籍も無事変えられた方々はどう考えるのか

となると、当然手術して戸籍まで変えた方々も全ての行程を終えた後に感じることは人によりけり、ということになります。

とはいえ、元々心が感じていた性別に身体を合わせることによって「やっと元々の自分に戻ることが出来た」となる人や「本当の自分になれた!」という「微妙なようで大きな感覚の違い」についてはセクシャルマイノリティ当事者の方が気になるかもしれないですね。

番組に出演されていた方々の場合では、「なる」や「戻る」というよりも「これから始まる」という表現をされている方もいました。考えてみれば、性別に関する物事が一段落したとはいえ、その他のことは何もかも全部これからですよね。

【4】まとめ

筆者自身はトランスジェンダーではないので、「なる」のか「戻る」のかという話題そのものに先ずインパクトを受けてしまい、改めて「性別適合手術やトランスジェンダーってなんだろう」となったので敢えて記事にしてみました。

性別適合手術がゴールじゃないという大切なことが頭から抜けていたんですよね。恥ずかしながら……。

当事者の方からそうした話を聞けたことで「まだまだ知らないこと、分からないことが多いな」と、大枠では同じセクシャルマイノリティではありますが、しみじみと考える時間となりました。

(シキ/ライター)

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