レズビアンとはまた違ったもので、女性同士の繋がりを指すエスという言葉があります。
詳しく説明していきます。
【1】 レズビアンとまた違う「エス」という関係
大正時代から昭和初期にかけて女学生の間で流行していた「エス」という関係性をご存じでしょうか。
少女・女学生の深い絆を「sister」の頭文字を取って「エス」と呼ばれていました。現代の小説『マリア様がみてる』シリーズの元ネタとも言われる関係性です。
同性愛とまた違った特別な関係「エス」について今回はご説明していきます。
【2】「エス」の関係性と背景
エスという関係性はなぜ生まれたのでしょうか。
その歴史的背景を説明します。
(1) 女学生同士の強い繫がり
大正時代から昭和初期の女学校の上級生と下級生または女性教師によって結ばれる関係「エス」。
この関係には強い繫がりにはいくつかの特徴があります。少女同士の一対一の関係であること、お互いは唯一無二の存在であり他の女生徒と仲良くならないことです。ですが、現実にはそれを裏切ることも多々あったそうです。
上級生と下級生で結ばれる関係性であり、それぞれ1人すつで結ばれるものでした。
地域によって多少の違いがあるが、違反すれば制裁があったそうです。
エスは近親相姦的な願望であったという分析もあり、互いを好きになると恋人にも友人にも家族にもなりたくなる。最終的に同一化を求めるものとなるそうです。同性愛とも友情とも取れる曖昧な関係性ですが、繫がりは強いものでした。
(2) 結婚前だけの特別な関係
この時代に女学校に通えるのは裕福な家のお嬢様だけでした。家柄故に教養や裁縫など花嫁修業的なことも学校で学ばなければいけません。許婚が居る人も多く、異性との交流は禁止されており交際などご法度です。
そんな環境故に上級生と下級生による「エス」という関係が生まれる要素となっていました。友情以上の関係である「エス」は女学生の心をときめかせましたが、卒業と同時に解消しなければいけない儚い関係でもありました。
当時は女性は経済的自立が出来ない為、多くの人が卒業後は結婚することになっていました。卒業後でもこの関係を続けていると「老嬢」と貶められてしまったそうです。
海外でも似たような関係性がありましたが、女性が経済的自立が出来るようになったり性科学が登場したことで激しい非難を受けることになりました。
近代日本では女性の経済的自立が不可能であり、すぐに結婚させられてしまうので「エス」は女学校にのみ発生する関係とされて非難はされなかったようです。
(3) 心中事件まで起こった「エス」という関係
女学校卒業とともに解消される儚い関係故に、心中事件まで起こっています。お互いを唯一とし、想い合う強い繫がりの関係なので思い詰めて心中に走ってしまう女学生も居たのです。
女性同士の心中は19世紀から報道はされてきましたが、1911年の新潟で女学生同士の心中事件が起きてから1930年代に女学生同士の心中事件が頻発したそうです。
この頃に「エス」は同性愛として問題視されましたが、友情と弁別が困難だったために女学生同士の一時的・精神的なものとされました。
【3】 まとめ
大正から昭和初期にかけて女学生の間に流行していた「エス」という関係は、女学校という環境から発生する機会的同性愛に近いものかと思われます。
異性が居ない環境で性的指向が未形成な段階だから生まれたのではないでしょうか。
「エス」という関係は戦後、男女の恋愛が自由となり女学校が解体されたのもあり、衰退していきます。しかし、「エス」で求められる同一性・鏡像性と同じく現代でも仲の良い女友達を双子コーデをするのは「エス」に近いものがあります。
(みなと/ライター)
コメントを残す