同性カップルの子育てエッセイ『お母さん二人いてもいいかな!?』とは

レズビアンは法律婚できないから子育てできない?

そんな不安を取り除いてくれるコミックエッセイ作品、中村キヨさん著『お母さん二人いてもいいかな!?』を紹介します。

 

【1】レズビアンカップルの育児を描いたマンガ

レズビアンカップルの子育てを描いたコミックエッセイで、2015年1月に出版されました。

サツキさんとキヨさん、ふたりが育てる3人のお子さんとの日常が描かれています。

このマンガはLGBTの流行に乗って書かれたものではなく、また権利を求めるための作品でもありません。

くすっと笑えるようにコミカルに、でもまじめに描かれています。

 

 

【2】リアリティ溢れる! オススメポイント3選

今回はこの作品を読んで、わたしが心に留まった点をお伝えします。

(1)産後うつ

キヨさんは、第2子を産んだサツキさんの異変に気付きます。サツキさん話を聞くと、誰もが思い描くような完璧な育児を遂行できない自分に対し、無責任だと気に病んでいるようでした。

キヨさんはサツキさんに対し、病気のせいにすることを提案します。心療内科での診断は「産後うつ」。治療に際し、ふたりはお互いに尊重してほしいことを、覚書で作り約束しました。

病気のせいにしていい。レズビアンカップルだからこその話ではなく、子どもを持つ人、さらには心を病んでいる人全員に言えることだと思いました。うつになると、自分を責め続けることをやめられません。

育児も、うつとの向き合い方も、世の中の正解がすべて自分たちにとっての正解とは限りません。自分がやりやすい方向、落ち着く方向を、身近な人と話して理解し合うことが大切だと思います。

(2)カミングアウトについて

キヨさんは「世のため人のため自分のため」レズビアンカップルでの育児を、ママ友にカミングアウトするか考えたこともあったとのこと。その考えに対し、サツキさんは反論します。

女性同士で結婚をした家族だということを周囲の人に言うか、言わずに隠し通すかは、子どもたちが選ぶ権利であり、尊重するべきだと。子どもたちが自発的に言うまでは、隠す権利を守り続けなければならないということ。

これは、子どもが親を選べないからこそ、選べることは選ばせてあげたいという、サツキさんの願いでした。

わたしはこの頃、公表することが正義だとする風潮を感じて疲れていました。性的少数者としてだけではなく、日常的なことでも……。大切にされるべきなのは本人がどうしたいかで、本当は公表したくたくないなら言わなくていいはずです。隠す自由をマンガのなかで肯定してもらえたこと、とてもありがたく思います。

(3)婚姻制度への疑問

サツキさんが授かった3人の子どもは、3人とも婚外子です。もしも法整備が整い、キヨさんとサツキさんが同性婚をしても、3人の子どもが婚外子であることには変わりありません。

ふたりは婚姻制度を充実させるよりも先に、個人としての保証が充実されるべきだという意見を持っていました。

世界各地では同性婚、国内でもパートナーシップ制度など、行政がさまざまな整備を進めています。これ自体は理解を広げるために意味のあることだとわたしは思うのですが、ひとりひとりを守れる制度の整備が進んでほしいと思いました。

婚外子、事実婚など、婚姻にまつわる当事者の悩みは数多く、これまで「責任がない」と一言で片付けられてきたことに、これからの時代は向き合う必要があるのではないでしょうか。

 

【3】まとめ

レズビアンのカップルが子育てをするというのは、異性愛者の夫婦が子育てをすることと比べて少数者ではあります。

そこで生まれる悩みは、分解していけば普遍的なものでもあることに気が付きます。同性愛だから特別なのではなく、誰もが特別なのです。

『お母さん二人いてもいいかな!?』人との向き合い方、家族の在り方を考えるために、ぜひいろいろな方に読んでいただきたい一冊です。

(オーノサエ/ライター)

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