レズビアンを題材にした文芸作品は数多く存在します。
読書好きの方へオススメの作品をご紹介します。
【1】 文芸作品の中に見られる「レズビアン」
以前「レズビアン・百合の雰囲気を感じられる漫画や映画作品」をご紹介しました。
ですが、文芸作品の中にも「レズビアン」をテーマにした作品は少なくありません。
そこで今回は「レズビアンをテーマにした文芸作品」をご紹介したいと思います。
【2】「レズビアン」をテーマにした文学作品
漫画や映画よりも文芸作品を読みたい人がレズビアンの世界を感じるには、どういった文芸作品が良いのでしょうか。
レズビアンの一人として、オススメの文芸作品を3つご紹介します。
(1)『卍(まんじ)』谷崎潤一郎
近代日本文学を代表する文豪、谷崎潤一郎さんによる卍模様のような倒錯的な愛を描いた作品です。登場人物の「柿内園子」による氏名不詳の“先生”に対する告白録という形式で物語が描かれています。
美術学校に通う柿内園子は徳光光子と知り合い、数日のうちに学校では「2人は同性愛関係なのでは」という噂が広まります。
当初は根も葉もない噂だったものが、2人は会うたびに仲を深め本当に同性愛関係となります。
しかしその関係が園子の夫にバレてしまい…と女性同士の親密な関係と元から結ばれていた男女の関係が入り乱れる作品となっています。
(2)『荊の城』サラ・ウォーターズ
海外作家のサラ・ウォーターズさんの長編の歴史犯罪小説です。ちなみにサラ・ウォーターズさん自身がレズビアンでもあります。2002年にイギリスで発刊されました。
小説の舞台は19世紀ヴィクトリア朝のロンドン。スリの一家で育った娘スーザン(スウ)は詐欺仲間のリチャードからとある計画を持ち掛けられます。ロンドンからはるか遠くにあるブライア城に居るモードという令嬢を騙して財産を手に入れようという計画でした。
計画に乗ったスウは侍女としてモードに近寄りますが、スウとモードは外界から遮断された環境の中親密な関係になっていきます。
こちらの『荊の城』はイギリスでドラマ化もされていますが、2016年に公開された韓国映画『お嬢さん』の原作ともなっています。『お嬢さん』では舞台がヴィクトリア朝から日本統治時代の朝鮮と変更されていますが、基本的なストーリーに変更はなく、サラ・ウォーターズさんも大絶賛する完成度となっていますので、ご興味がある方はこちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。
(3)『ナチュラル・ウーマン』松浦理英子
文學界新人賞や泉鏡花文学賞を受賞している女流作家松浦理英子によるレズビアンを描いた作品です。松浦理英子さんは小説・エッセイともに一貫して性愛における“性器結合主義”への異議を唱え続けている作家でもあります。ちなみに、一般的な意味での“フェミニスト”ではありません。
主人公の漫画家の容子、その恋人であった花世、夕記子、由梨子の恋愛物語となっており、表題作の「ナチュラル・ウーマン」と「いちばん長い午後」、「微熱休暇」の3つの物語から構成されています。
「ナチュラル・ウーマン」は大学生の容子と花世の恋愛と別れを描いており、「いちばん長い午後」は花世と再会、夕記子との恋愛と別れと由梨子との新しい恋の予感、「微熱休暇」は由梨子との旅行の様子を描いています。
1994年に映画化され、2010年に再映画化されています。ただ映画の方は大幅なストーリー変更や原作では深掘りされていたジェンダーやセクシャリティ問題が描かれていなかったりしますので、原作を読むことをオススメします。
【3】まとめ
谷崎潤一郎の『卍(まんじ)』は細かく言えばバイセクシャル要素を含んだ作品とも言えますが、女性同士の恋愛がメインであるので入れさせていただきました。
『茨の城』が韓国映画『お嬢さん』の原作と知った人は多いのではないでしょうか。
『ナチュラル・ウーマン』はセクシャリティの問題も取り上げられている作品なので、これを機に読んでみてはいかがでしょうか。
(みなと/ライター)
参考
谷崎潤一郎:『卍』(新潮社,1951)
サラ・ウォーターズ著,中村有希訳:『荊の城』(創元推理文庫,2004)
パク・チャヌク:『お嬢さん』(韓国公開2006)
松浦理英子:『ナチュラル・ウーマン』(河出文庫,2007)
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