成人式。それは子供が正式に大人達の仲間になる祝いでもあり、今でも「7つまでは神のうち」なんて言葉も残るくらい難しい子育てというものに区切りがつく親にとっても一大イベント。
たとえ子供の心の性別がどうであろうと、肉体の性別しか知らない親からしてみればだいたいそちらで色々と夢を馳せるらしい。とはいえ、当事者……特に家族との仲が悪くもないけれど、くらいの当事者は苦労したのではないでしょうか。
私も苦労した身なので、もしこれからという人は先達の資料として、もう終わった人は「あったなあ」と辛くない程度に当時に思いを馳せてみて欲しいと思います。
【1】親は予想以上に早いうちから期待している!
だいたい成人式というと服装も会場も地域によってバラバラですよね。
某夢の国で行う所や、卒業した学校、大きなホール…そして、「参加者が何を着ていくか」という様々な情報を親は子供が思っているよりも早く調べています。
だいたい成人式に出る本人はマイノリティでなくとも学業や仕事に忙しい時期です。「前の年くらいにどうするか親に相談してみるかな~」と気楽に構えていたら、もう殆ど決まっていることもあります。前々年度くらいから親は調べていると思って構えた方が良さそうですね……。
【2】写真が残る辛さと、親孝行をしなければという辛さ
肉体の性別と心の性別が合わない当事者で、それでも家族とそれなりに仲の良さを保っている所は多いでしょう。
カミングアウトしていないから保てている所、したけれど保っている所。そうした様々な事情は置いておくとして、期待に胸を膨らませるばかりの親とどうやって意見を摺り合わせるか、折り合いをつけるかの難しさに直面させられてしまうのがこの行事においての最難関だと思います。
親孝行したい気持ちはあっても、残った写真を見る度に暗い気持ちになってしまうとしたらそれは良くありません。そういう気持ちは、自分を嫌ってしまうことに繋がりやすいからです。
【3】私の場合、友人の場合
では、私や周囲にいるマイノリティな友人の場合どうだったかというと、振り袖は嫌だと揉めに揉めた挙げ句に男装用のスーツを着た人、自分の好きな服へのこだわり故にそのファッションで行った人、嫌々ながらに振り袖を着た人、何故か親もノリノリでメンズ向けのド派手な羽織袴を選んだ人などなど。
どうしても肉体が女性なのでマイノリティの友人はだいたい肉体が女性なのだけれど、かなりの違いがあります。
私は私で学業に振り回され精神的に弱っていた頃だったので、気が付いた時にはもう親との意見交換をする余裕もなくあっという間に前撮りの写真を撮らされました。髪型も何もかも親の意見で撮られた写真は、自分でも分かるほどに笑顔が引き攣っています。
【4】どこまでなら可能か、を考える
日頃の服装や、好むファッションを思い出して欲しいです。例えば、赤い服があってもそれが淡い赤か深い赤か。柄ものなら、シンプルな柄が好きかごちゃごちゃしたデザインが好きか。メンズ服が多いかレディース服が多いか。
普段和服を着なかったり目にする機会も減ってきていると、いきなりお店に連れて行かれて色々見せられても混乱しやすいです。
ですから、「自分の基本的な好み」を頭の片隅に入れた上で「これくらいなら大丈夫かな」のラインを考えておくとかなり違うと思います。幸い、現代は通販サイト等を巡れば着こなしも含めて参考画像は沢山手に入るので出来るだけ見ておいて欲しいと思います。
【5】着物だけじゃなく髪型も
最近ではどうか分からないけれど、「成人式で髪の毛セットするんだから伸ばしておきなさい」と言われたのが苦痛だったとぼやいた友人もいました。私もそうです。
髪の毛というのは普段から伸ばしている人とそうでない人で扱いの難しさを感じる度合いが違うものだし、どんな髪型にするか方向性も決まっていないのに伸ばすというのは地味にストレスだったりします。
そもそも、ロングヘアが好きではないから切っているわけで……。これも着物と同じく髪の毛が短くてもそこそこ着飾れるという資料を集めて出すしかありません。油断をしていると髪の長さに関係なく、自分の好みでもない髪型にされてしまうのがオチなのです。
【6】可能性を見付けられるかもしれない
年齢的に何かと忙しい時期にこういう面倒な話を親とするのは、苦痛だと思うし実際苦痛ですよね。
けれど、両者が後悔したりしないためにもやっておいて損はないと思います。結果的にどうなったとしても、話し合い折り合いをつけられるかの過程に「何かあったときの親への対抗策」を考えるヒントくらいは見付かることがあるからです。
それと、単純にファッションの話として「こういうのなら、着てもいいかも」という選択肢が増える切っ掛けになったりもする。選択肢は多いに越したことは無いので、話すだけ、調べてみるだけでも価値はあると思います。
【7】まとめ
マイノリティを抱える人の成人式については、他の視点からももっと考えた方がいいのかもしれないと思いながらも私の中では未だに答えが出ません。
肉体が女性のマイノリティではなく、男性の場合はどうなのか。性自認が一致しているなら特に問題はないのか。他にも細かい部分を考えると、これが当事者だけで済む話ではないからこそ難しいのかもしれないとも思います。
だいたいマイノリティでなくとも本人より親の方がテンション高い状態でこの行事に関わっているなんて家庭も多いのではないでしょうか。
だからこそ、それなりに良好な関係を保っている当事者は悩むだろうし、後々後悔したりもします。親孝行したい気持ちは悪いものではないし、自分の心も悪いものではないですよね。
だから、これからの人は是非とも親と自分と向き合う機会として一度でもいいのでチャレンジして欲しいと思うし、苦い顔で当時を思い出す人もその過程で得られたものがあるはずなのできっと大丈夫なのだと思います。少なくとも、色々と悩んだりしたことは無駄ではないのだから。
(Shano編集部)
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