父の昔話を起点に考える…現在の地方のLGBT事情や諸課題

LGBT総合研究所「LGBT意識行動調査2019」

LGBT関係についての話題が少しずつ表に出るようになったここ最近、地方でも条例などが出来つつあります。

一方“微妙に表に出ることができない当事者感覚”を地方に住む当事者の一人として感じていたので、それについて少し書いてみようと思います。

 

【1】きっかけは父の昔話

“微妙に表に出ることができない当事者感覚”を考えたのは、父の大学時代の話でした。父は年代でいうとバブルが始まる前に進路の為にと地方から上京して大学に入った人間でして、そこの寮には同じような地方出身者が多く集まっており、その中に同性愛者の男性がいたというのです。

幾ら高度経済成長期を少し過ぎたとはいえ、地方出身者が上京するにはかなりハードルが高い頃です。というのも、これはそれぞれの地域や家庭環境にもよりますが、現在でも都市部以外では出来るだけ地元に居着いて居て欲しいというのが強くありまして、それが自分達の親世代ともなると進学の為に上京するというのも難しいんですよね……。

父の目指していた職業がお堅い職業というのもあり、また当時はまだまだLGBTという概念すらもあるか怪しいわけですから、「その人はどうしたの?」と尋ねた私の心に不安が満ちたのも仕方ないのことなのです。

私は「大学辞めて、二丁目で働いてお店持てたとか聞いたなあ」という父の返答に安堵すると共に、心の中には重たい感情が渦巻いたままでした。

 

【2】表に出てはならなかった“少数派”

当時の同性愛者については、ゲイ男性向けに「薔薇族」などの雑誌がかろうじてあった時代から少し進んだ頃でしょうか。

とはいえ都市部であれ地方であれ「自分のセクシャリティがバレてはならない」という危機感が現在よりはるかに高い時代です。バレてしまえば簡単に差別対象とされ、どんなトラブルが降りかかってくるか分かりません。

だからこそ、私には大学を辞めた父の学友だった人が「何とかして家から逃れるために上京して、その先でやっと仲間に出会うことが出来たのでは」と思ってしまうのです。

 

【3】条例は出来てもオープンにならない

最近、パートナーシップ条例が地方にも浸透しつつあります。けれど、実際それが稼働しているのかなと疑問に思う所があります。

というのも、私の住んでいる地域も条例が制定された土地なのですが、それについての報道や、LGBT関係の情報を地元のメディアなどはあまり扱ってくれていないと感じてしまいます。

地方は特に住人の年齢層が高いので、ネットではなくテレビなどで取り上げられない限りこうした話題というのは「見えない=無いもの」となりがちなのです。

LGBT総合研究所の約43万人に渡る大規模調査においても、83.9パーセントが、「身の回りにLGBT・性的少数者はいない」と回答しています。もちろん、およそ1割りと言われているセクシャルマイノリティの人たちがカミングアウトしていない可能性も考えられますが、こうした背景が関与しているのではないかと推察できます。

また、古い考え方のまま知識や思考がアップデートされていない人が身近にいることが多く、当事者としては“身動きしにくい”という感覚が続いています。

 

【4】現状打破出来るなら変わることも多い…

地方は都市部に比べると、多様性というのものがないと言ってもいいでしょう。勿論、全部が全部ではありませんが……。

ただ、せっかく条例を作った地方ならLGBTに関するPR活動というか周知活動をセットにすれば条例が腐らずに済み、人材確保などの問題だって多少は解消するかもしれないと思ったんですよね。理解がされない場所から逃げなければ、と地方から出ていく若者の数が減らせたりしますから。

けれど、こうした制度というか政治という部分に関しては恥ずかしながらまだまだ知識不足なので、「これが最適解!」と言えないのが残念です。

 

【5】まとめ

地方から若者の流出が止まらないと言われる昨今ですが、もしかしたらその中にはせめてLGBTの仲間がいる場所に行きたいと切実な願いを抱えて出て行く人もかなりの割合でいるのではと父の昔話から考えていました。

都市部とは逆に地方の場合、条例よりも先に「こういう人たちが自分達の住む土地にもいるよ」と呼びかけること、「多様性が大事なんだよ」と邪魔者扱いされないところから始めないといけない気がして、頭を抱える羽目になりました。でも、それが現実なんですよね。

少しでも良い方向に変わる何かを見付けられるように頑張りたいところです。

(Shano編集部)

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