【性分化から解説】セクマイが生まれる理由・脳や行動に性差がある理由

LGBTが生まれる理由や男性らしさ、女性らしさが存在する理由

トランスジェンダーやXジェンダーのように、心の性と体の性が一致しない人たちがいます。なぜそのような人が生まれてくるのでしょうか。性分化の仕組みから解説していきます。

また、世間ではジェンダーバイアスが強く言われるようになってきていますが、“バイアス”を取り除くことができても、完全に男らしい考え・行動というのを無くすことはできないと考えられます。これについても医学的に説明していきます。

 

【1】性分化とは?

男性や女性というのは、性染色体によって決まっていきます。XYなら男性、XXだったら女性といった具合です。

しかし、性分化の仕組みというのは決して単純なものではなく、XYであれば男性の体や脳になり、XXであったなら女性の体や脳になるとは限らないのです。

現在の医学では、男性や女性を形作る全容について解明されていませんが、明らかになっていることで、心の性と体の性が一致しない人がいる理由や仕組みについて解説していきます。

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【2】医学的に解説…心の性と体の性が一致しない理由

XY染色体を持つ胎児(つまり男性)は、Y染色体上の性決定遺伝子が性巣を作るよう指示をします。すると、女性への分化を妨げ(脱雌性化)、未分化の生殖腺が性巣に分化。テストステロンなどの男性ホルモンを分泌し、限られた時期の間(臨界期)、この男性ホルモンが男性たらしめる機能を作り上げて行くのです。

一方、XX染色体を持つ胎児(つまり女性)は、この指示を受けないため、女性として育っていきます。つまり、男女の違いのほとんどは、男性ホルモンの有無で決定され、学者の間ではこれが最も重要な働きであるという見解で一致しています。“哺乳類の性分化の基本はメス”と学校で習うのはこのことです。

ちなみに、臨界期は性器と脳といった体の部分によっても異なり、脳においては神経回路によっても異なるとされています。そのため、男性ホルモンの分泌は神経回路が発達するために必要な時期に浴びる必要があり、浴びることでオス特有の行動1つ1つの行動の元となるものが作られていきます。これによって、性器は女性であっても、脳が脱雌性化や雄性化した人も生まれます。

麻生氏の立てた仮説では、体の性分化と性自認の神経回路の臨界期が異なるとすると、「体の性分化の時期にはそれに十分な量の男性ホルモンを性巣が分泌し、心の性分化の時期にはそれに十分な量のホルモンを性巣が分泌しなかったら、その人は男の体と女の心を持つだろう(麻生・2010・P.196)」ということです。逆に、男性の体の性文化の時期に十分なホルモンを浴びず、心の性分化の時期に十分浴びれば、女の体と男の心を持つと考えられるようです。

なお、なぜホルモン量の低下が生じるのかという点については未解明ですが、母体の激しいストレスが分泌の低下につながっている可能性があると考えられています。

ですが、1960年〜1980年代ごろには、フェミニズム運動が盛んになり、脳の違いに関する生物学的基盤の話はタブー視されてきました。理由は、「脳の性差は先天的で、教育で変えることができない」となると、男女差別につながるのではないかと考えた人たちがいたからであり、実際、生まれたその瞬間から男女には行動さがあると言われています。そのため、この社会的風潮によって、研究者たちは自身の生活なども影響を受けるため論文として出しにくくなってしまいました。1990年からは流れが変わり、今や脳科学においてこの話題はトレンドになりつつあります。

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【3】同性愛も脳の性分化によるものなの?

残念ながら、心の性を決める性自認や好きな人、性的に惹かれる対象を決める性的指向・恋愛指向が、脳のどこの働きによって決定されるかについては未解明です。ですが、「同性愛の男性と異性愛の男性」の脳について、性分化を決める部分を比較すると細胞の数が異なっています。

そのため、細胞数が、性的指向・恋愛指向の決定に何らかの影響を与えているであろう…ということまでは推察できているようです。

こちらも、トランスジェンダーやXジェンダーが生まれる理由と同様、麻生さんの仮説にはなりますが、同性愛が生まれる理由についても似たような仮説が立てられます。

これについては、外性器・性自認の神経回路の性分化、それに加えて未だに未解明の性的指向の神経回路の性分化3つの臨界期がずれていたとした場合に、性的指向の神経回路の性文化時期に、十分な男性ホルモンを浴びなければ、その人が男性に強く惹かれる傾向にあるということです。逆に、女性は性的指向の神経回路の臨界期に、何かの原因によって男性ホルモンに晒された場合、女性に強く惹かれる傾向が出るはずだと説明します。

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【4】まとめ

定められた時期(臨界期)に、男性ホルモンを浴びることで男女差が生まれていくわけですが、外性器(体を作るもの)と性自認、性的指向の臨界期が異なると仮説した場合に、トランスジェンダーやXジェンダーのように体の性と心の性が一致しない人が生まれたり、レズビアンやゲイセクシャルのように同性愛などの性的指向・恋愛指向が生まれる理由に説明がつきます。筆者的には、性的指向と恋愛指向が必ずしも一致しているわけではないため、臨界期が違うという仮説に基づくなら、この2つも別の臨界期があるように思います。

ですが、医学界において、未だに複雑な脳の領域はほとんど解明できていないと言われているため、明確な差異については解明できていません。せいのあり方に関する研究は未だ途上ですが、性別を定義するバイオマーカーについては、遺伝子学、精神科学、生理学、心理学の分野から性別が正確に機能する仕組みについて研究が進んでいると言われています。

ジェンダーバイアスはセクシャルマイノリティにとって生きにくい原因となってはいますが、生物学的に、男性ホルモンが男女の行動決定に作用しているからこそ、「男性らしさ」「女性らしさ」が生じています。したがって、本当に偏見的なバイアスなのか、あるいは生物学的な差異なのか違いを明確化した上で、バイアスの部分を取り除かなければならないのかもしれません。

そこを理解しない上で、ジェンダーバイアスの払拭として、男性らしさ、女性らしさを全て払拭しようとなると、今度は社会風潮によって脳科学を研究する専門家が男性・女性の差分を作る部分について研究をすることが難しくなり、「なぜセクマイが生まれるのか」という部分の解明から離れてしまうかもしれません。また、なぜ男女の役割分担がこれまでなされてきたのか…という話にも繋がっているのかもしれません。

もちろん、生まれる前の生育過程で「そういう人もいるのだ」という事実が大切にはなりますが、そうすることで、「セクマイは変なのではなく、生物学的に当たり前にある違いなだけなのだ」と周知され、偏見の目に晒されなくなる…というあるべき世の形から離れてしまうのかもしれません。

本当の意味でのジェンダー“バイアス”が払拭されることを心から願っています。

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(Amy/ライター)

参考文献

麻生一枝(2010)『科学でわかる男と女の心と脳』サイエンス・アイ新書 ソフトバンククリエイティブ社

新井康(1997)『男脳と女脳 こんなに違う』KAWADE夢新書 河出書房新社

キムラ、ドリーン著、野島久雄ら訳(2001)『女の能力、男の能力』新曜社

Arnold AP(2004)「Sex chromosomes and brain gender」Nature Reviews Neuroscience 5
https://www.nature.com/articles/nrn1494

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